植物が本来育つ環境を知る
――植物育成を始めたきっかけを教えてください。始めて良かったと思うこともお願いします。
2人目の子どもが生まれるタイミングで家を買い、最初はインテリアの目的で植物を増やし始めたのがきっかけです。ホームセンターや百円ショップの植物でも十分に楽しめましたし、その時に購入した植物たちを今でも大事に育てています。
どこで買うか、どんな品種かにこだわりすぎなくても、観察を怠らず、しっかりと環境を整えて管理すれば、どんな植物も健気に成長して応えてくれる。自分の手でその子たちの魅力やポテンシャルを引き出して、価格以上の価値を自分で作っていける可能性に魅せられました。
満足のいく姿になることも大きな魅力ですが、そこに至るまでの工夫や迷いも含めて、自分と植物のオリジナルストーリーになるのがとても楽しいと感じます。
そのほかの植物育成の魅力は、
・完成がないこと
・一人でも完結できること
・コミュニティにもつながりやすいこと
・他の趣味や芸術活動とも相性が良いこと
など挙げればキリがありません。


――植物育成において、特に気をつけていることや管理方法について教えて下さい。 (水、光、風、温度など)
その植物の特徴と自生地の環境をしっかりと調査するのが大事だと思います。決められた要素を決められたタイミングで与えるのではなく、その植物が好む環境をリサーチして育成環境や水やり頻度に反映しています。
Googleマップで現地の様子を見たり、年間降水量や雨の頻度、標高を調べたり、写真などから土質や光の強さを想像するのもおすすめです。
要素としては特に光が重要だと思っていて、要求する光の量に合わないと美しく育たないだけではなく、株が健康を損ない、病気や害虫に狙われやすくなるためです。


――植物育成をされていて失敗したなと思ったことはありますか? あれば理由を教えてください。
光に反応して赤く紅葉するティランジアを最大限に発色させるために、光を与えすぎて葉焼けさせてしまいました。
欲張りすぎはNGですね。
でも、失敗から学ぶことも多く、LEDであればどの程度まで近づけると葉焼けしてしまうのかなど、しっかりと観察と振り返りをセットで行えばその後の育成に活かせる収穫でもあります。
失敗を失敗のまま終わらせない、タダじゃ転ばない精神も大切ですね。

――育てやすい、あるいは育てるのが難しいと感じる植物はありますか?植物名とその理由を教えてください。
一番育てやすいのはティランジアです。乾燥にも強いですし、環境が良ければジャブジャブ水やりしてもかっこよく育ちます。
水をたくさんあげたい人にも、あまり頻繁に水やりできない人にも合わせてくれる、
キャパの大きな植物だと感じます。
逆に、きれいに育てるのが難しいのはビカクシダで、葉の展開にエラーが多かったりするので、葉を組み替えたり、苔を足したり引いたりして理想の形を目指して仕立てています。
育成自体は難しくないですが、美しく作り込むにはこまめな観察と調整を繰り返す必要があります。それが楽しみだったりするんですけどね。


――――今後育ててみたい植物や挑戦してみたいことはありますか?
盆栽です。実はすでに数鉢育て始めていて、書籍などで勉強もしています。
株のシルエットや枝ごとに名前がついていたり、美しく作り込んでいくための季節に沿った作業など、園芸の奥深い楽しみが凝縮されていると感じます。
株の魅せ方やバランスの取り方なども、他の植物育成にも活かせるエッセンスがたくさん詰まっています。

美しいティランジアの仕立て方
――植物育成においてインテリアやレイアウトで特にこだわっていることはありますか?
ティランジアの育成では、個性的な流木と合わせてその株が一番美しく見えるように仕立てて管理しています。
植物の一番見せたい角度と流木の美しい角度を調整して、唯一無二の組み合わせを作り、それぞれの魅力が相乗効果で引き立つバランスを探っています。
取ってつけたような作為を感じさせないように、あたかも長くその場所で息づいてきたような佇まいを目指して仕立てています。
もともと着生植物なので、流木に根を張り、活着していく様子を楽しめるのも大きな魅力です。

――SNSや本、動画など、植物育成の情報収集はどのようにしていますか?
新しく育てる種類の基礎的な育て方は、書籍やYouTubeなどの動画を参考にします。
また自生地の環境を知るとヒントが多いので、自生する地域の気候を調べたり、写真を見たり、Googleマップやストリートビューで現地の様子を見て回ることで、育成環境に反映できそうな要素を探したりもします。
細かな育成のコツや日本の育成環境下のリアルなPDCAの情報は、SNSの発信を見たり、DMで情報交換したりして知見を増やしています。
あとは、SNSで繋がっている方々と直接お会いしてお話するのも、学びが多く刺激もたくさんもらえます!

――植物育成の照明において重視されている点は何ですか?
PPFDと消費電力と価格です。光合成に利用できる光量が多い、PPFDの高いものを選んでいます。
また、植物の数が多いのでたくさん設置する必要があり、導入コストと維持コストを考えて、消費電力や価格も重要な要素です。
あとスペックだけに限らず、自分の目で見てシンプルに、目の前の植物が美しく見えるかどうかもかなり大事だと思います。

――植物育成ライトを使うことで、植物の成長や見た目にどのような違いを感じましたか?
一番わかりやすいのは発色です。その種本来の鮮やかさや力強さを感じる発色になります。また、適切な風とセットで与えることで、肉厚でガッチリした健康的な葉が展開します。
葉の質感が特徴的な種類は、その特徴がより顕著に表れたテクスチャーになったりします。
光に反応して赤く紅葉するティランジアなどでは、育成ライトとの距離を微調整して、好みの発色を再現したりできるのもおもしろいです。

――園芸初心者の方や植物をこれから育てる方に向けて、メッセージをお願いします。
こんな楽しい趣味はありません!
一人で自分のペースで進められるし、年を取っても続けられる、育成に完全な正解やゴールはないので、理想の姿を目指していつまでも何度でもチャレンジできる、植物の底なしの美しさと懐の深さを感じて、園芸を楽しんでほしいです。
枯らしてしまってもめげないでください。僕もたくさん枯らしてきました。未だに枯らしてしまうこともあります。でもその失敗から冷静に学んで次に活かすことで、必ず上手に育てられるようになります。


――あなたにとって植物とは何ですか?
“繋がり”です。
自分との繋がり
人との繋がり
地球との繋がり
・自分との繋がり
植物を通して、自分の美意識や価値観に触れ直すことで、自分がどんな人間だったかを思い出させてくれます。
・人との繋がり
同じ好きを共有する人たちとの、たくさんの素晴らしい出会いの機会をくれました。
・地球との繋がり
その植物がどんな国、環境、文化の中で生きている存在なのかを知ることで、全く知らなかった場所や、同じ地球上とは思えないような過酷な環境の場所が存在すること、そしてそこは今も自分が生きている地球というステージの上で繋がっていることを感じるロマンがあります。
昔は旅行にあまり興味がなかったのですが、植物を見られるなら行ってみたいし、自分の植物の成長を見届けたり、まだ見ぬ素晴らしい植物たちと出会えるなら長生きしたいと思うようになりました。


――ありがとうございました。

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